2012年3月24日土曜日

アメリカ北東部スポーツビジネス研修プログラム 5、6日目 ニューヨーク

アメリカンドリームを求めて、世界中から様々な国籍・人種・バックグラウンドを持った人々が集まり、街中にポジティブなエネルギーが満ち溢れているニューヨークで開催された、研修プログラムの実質最終日である5日目は、こちらを訪問・視察しました。

1. 全米テニス協会/USTA Billie Jean King National Tennis Center
2. メジャーリーグベースボール選手会
3. Madison Square Garden
4. Foley’s Pub

1. 全米テニス協会/USTA Billie Jean King National Tennis Center
午前中は、Tennis ProfessionalのReiko Giffords氏より、テニスのグランドスラム大会US Open Tennisのトーナメント会場であるUSTA Billie Jean King National Tennis Centerをご案内頂きながら、各施設の特徴や、全米テニス協会及びUS Open Tennisの歴史についての解説を受けました。

USTA Billie Jean King National Tennis Centerは、ニューヨーク市クィーンズ区のFlushing Meadow Corona Park内にあり、全米テニス協会がニューヨーク市のために運営する世界最大の公共テニス施設です。0.188 平方キロメートルという広大な敷地内には、屋内外合わせて45面のテニスコートが設置されています。

1978年にオープンしたUSTA Billie Jean King National Tennis Centerには、毎年8月下旬から9月中旬にかけて開催されるUS Open Tennis期間中に、世界中から70万人以上のテニスファンが来場するそうです。全米テニス協会が主催するUS Openは、規模、集客人数、賞金額共に世界最大のテニストーナメントなのです。

1997年に2億5, 400万ドル(約200億円)をかけてUSTA Billie Jean King National Tennis Center内に建設されたメインコートArthur Ashe Stadiumは、収容人数2万2, 547人を誇る世界最大のテニス専用スタジアムとして知られています。
 
あまり知られてはいませんが、Arthur Ashe Stadiumを始めとするUSTA Billie Jean King National Tennis Centerは、US Open Tennisのトーナメント期間中以外は一般開放されており、全米テニス協会認定プロコーチによるプライベートレッスンや、ニューヨーク市民による草テニスリーグなどが開催され、年間を通して数多くのニューヨーク市民で賑わいを見せているそうです。

また、アメリカ国内におけるテニス競技の普及・育成活動の拠点としての役割も担っており、全米テニス協会が運営する、10歳以下の子供達を対象としたテニス普及プログラム「QuickStart Tennis」のレッスン会場、トップレベルのジュニア選手育成プログラム「USTA Player Development」のトレーニング施設、車椅子テニストーナメント「Jana Hunsaker Memorial Eastern Wheelchair Championships」のトーナメント会場などに利用されています。

2008年7月19日には、チャリティー活動の一環として、Arthur Ashe Stadium内にバスケットボールコートを特設し、WNBA公式戦New York Liberty対Indiana Feverが開催されたそうです。この男女を通じ、アメリカ国内で史上初めて屋外開催されたプロバスケットボール公式戦という歴史的なイベントには約2万人の観客が集まり、イベントを通じて得られた収益は、乳がん撲滅のための研究機関へと寄付されました。

参加者一同は、Giffords氏のご案内の下、USTA Billie Jean King National Tennis Center内を散策し、人気と実力を兼ね備えたトップシード選手のみがプレイする事を許されるArthur Ashe Stadiumのセンターコートや、Roger Federer選手やNovak Djokovic選手専用ロッカールーム、選手用ダイニングラウンジ、トレーニングルーム、室内練習場、メディアセンターなど、普段はアクセス不可能な施設を視察した事で、世界最大のテニストーナメントであるUS Open Tennisの舞台裏を覗く事が出来ました。

視察途中には、Arthur Ash Stadium内のインタビュールームに立ち寄り、Business ManagerのMarty Weinstein氏より、
  • US Open TennisとUSTA Billie Jean King National Tennis Centerの歴史
  • グローバル規模のスポーツイベントであるUS Open Tennisに対するマーケティング戦略
  • ジュニア年代へのテニス普及・育成活動に対して、全米テニス協会、及びUSTA Billie Jean King National Tennis Centerが果たしている役割
について、映像を用いながら非常に分かり易く解説して頂き、テニスビジネスに関して理解を深める事が出来ました。
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2. メジャーリーグベースボール選手会
午後は、高層ビルの建ち並ぶマンハッタン中心街にオフィスを構え、契約交渉や有力選手のFA移籍、トレードに対して強い影響力を持つ事から、「世界最強の労働組合」と呼ばれるメジャーリーグベースボール選手会を訪問しました。

先ずは、Chief Labor CounselのDavid Prouty氏より、
  • メジャーリーグ選手会の歴史と、その役割
  • 日本野球界にも影響が及ぶ可能性のある国際ドラフトや契約金制限など、2011年11月に凍結されたばかりの新労使協定
についての解説を受けました。

アメリカンリーグ、ナショナルリーグ各球団のメジャー40人枠に登録される全選手が加入する労働組合であるメジャーリーグベースボール選手会は、1953年に発足したそうです。1966年、全米鉄鋼労働組合の主任エコノミストとして活躍し、労使交渉の辣腕家として知られていたMarvin Miller氏を選手会委員長に迎えた事をきっかけに、徐々に力を強めていきました。

Miller氏の指導の下、1968年に史上初めてリーグ&オーナー側に労使協定を認めさせた選手会は、その後もメジャー選手の労働条件の改善を求めてリーグ&オーナー側と徹底的に争い、ストライキを繰り返して、FA制度や第三者による年俸調停権制度、トレード拒否権、最低年俸額上昇、年金制度などの権利を勝ち取って来たそうです。

続いて、Director, Licensing & Business DevelopmentのEvan Kaplan氏より、
  • メジャー選手の肖像権管理&活用例
  • 日本でのMLB開幕戦、及びWorld Baseball Classic開催による、メジャー選手へのメリット、デメリット
に関して、解説を頂きました。

選手会は、ベースボールカード会社やビデオゲーム会社などに対する、メジャー選手の肖像権販売を通じて豊富な資金力を保持しています。

Kaplan氏によると、億万長者であるリーグ&オーナー側と交渉する際に、選手会が豊富な資金力を保持している事は非常に重要な事であるそうです。超一流の弁護士が集まる選手会の運営、交渉に臨むためのリサーチ費用、万が一ストライキを決断した際の選手への一時金などは、全てメジャー選手からの会費、及び肖像権使用料によって賄われているからです。

メジャーリーグベースボール選手会を訪問し、Prouty氏、及びKaplan氏よりお話を伺った事で、「世界最強の労働組合」と呼ばれるまでに至ったリーグ&オーナー側との壮絶な戦いの歴史や、選手会がメジャー選手の労働条件向上のために果たしている役割、豊富な資金力の源泉について学ぶ事が出来ました。
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3. Madison Square Garden
メジャーリーグベースボール選手会訪問後は、地元ニューヨーカーの間で「The Garden」の愛称で親しまれている、多目的インドアアリーナMadison Square Garden周りを散策しました。

1968年にマンハッタンの中心地にオープンしたMadison Square Gardenは、NBA New York Knicks、NHL New York Rangers、WBA New York Libertyのホームゲーム、カレッジバスケットボールの全国トーナメント、ボクシングの世界戦といったスポーツイベント、世界的に有名なミュージシャンのコンサート、ファミリー層向けのサーカスショーといったライブエンターテイメントイベントを数多く開催し、世界で最も稼働率の高いスポーツ施設として有名です。

特にコンサート会場としては、イギリスのManchester Arena、The O2 Arenaに次ぎ、世界で3番目のチケットセールス売上高を記録しており、アメリカだけでなく、世界中のミュージシャンから聖地として崇められています。

現在は、10億ドル(約800億円)の巨費をかけて、スウィートルーム&クラブボックスの増設、入り口&通路の拡張といった改装工事が行われており、外からでもMadison Square Gardenがより豪華になって生まれ変わる最中である事が感じられました。

この日のMadison Square Gardenでは、夜7時よりRangersがニューヨーク州内のライバルであるBuffalo Sabresを迎え撃つニューヨーカー注目の一戦が開催されるという事で、アリーナ周辺は両チームのファンで非常に賑わいを見せており、世界最先端のアリーナの熱狂的な雰囲気を味わう事が出来ました。
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4. Foley’s Pub
夜は、世界のメディアの中心地でもあるニューヨークを拠点とするスポーツライター御用達のスポーツバー「Foley’s Pub」を訪れました。

Madison Square Gardenから程近いFoley’s Pubは、店内中に数え切れない程のスポーツ関連の記念品を所狭しと展示している事で有名です。

例えば、
  • 2,000個以上のサイン入りベースボール
  • 500体以上のバブルヘッド人形
  • 130チーム以上のサイン入りユニフォーム
といったお宝グッズから、
  • 2009年シーズンにMLB New York Yankeesがワールドチャンピオンに輝いた際に、ロッカールーム内で行われたシャンパンファイトで使われたシャンパンの空き瓶とコルク
  • MLB Chicago Cubsの本拠地Wrigley Fieldのブリキ
  • MLB Boston Red Soxの本拠地Fenway Parkの座席
  • クリーブランドで行われた2007年MLBアメリカンリーグ・ディビジョンシリーズYankees対Indians戦で使われた虫除けスプレー
  • MLBに蔓延していた禁止薬物に関して詳細にレポートされた極秘資料Mitchell Reportのコピー
  • Alex Rodriguez選手が臀部の手術を行う際に撮影されたレントゲン写真
といったマニアックな記念品までが展示されており、ニューヨークを訪れるスポーツファンにとって、必ず立ち寄りたいスポーツバーなのです。

MangerのMike McCormack氏よりお話を聞かせて頂きましたが、店内に展示されている殆どの記念品は、Foley’s Pubの常連客であるスポーツライター達が取材現場から持ち帰って来たお宝グッズだそうです。

参加者一同は、店内中に展示された記念品の数々に驚嘆の声を上げながら、この日にMadison Square Gardenで開催されていたNHL Rangers対Sabres戦や、NCAA男子バスケットボールトーナメントMarch Madnessをスポーツバーで観戦するニューヨーカー達に混じって盛り上がっていました。
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Folye’s Pubでビールとナチョスを味わいながら、スポーツ観戦した後は、地下鉄を乗り継ぎ、昨晩から宿泊しているニューヨーク市内のホテルへと戻りました。

翌6日目は、ホテル内のロビーにて、アメリカ北東部スポーツビジネス研修プログラムの振り返りを行いました。

参加者の皆様からの反応より、今回の研修の趣旨である、
  • 最先端のエンターテイメントが集結する世界一の大都市ニューヨークで、ファンを魅了し続けるスポーツビジネス(球団、施設、公式戦観戦など)の現場に触れる
  • 世界一の大都市ニューヨークとアメリカの首都ワシントンDCの間に存在するフィラデルフィアとボルティモアで実践されている、地方都市ならではのフランチャイズ経営と、スポーツを通した地域振興&都市開発を学ぶ
  • アメリカではまだマイナースポーツであるMajor League Soccerチームが取り組む、創意工夫を凝らした球団経営法について学ぶ
  • プロリーグ選手会、スポーツマネジメント/マーケティング会社、リーグ公式アンテナショップ&フラッグシップストア、スポーツレストラン&バーを視察し、スポーツ業界におけるキャリア選択の幅広さを実感する
という事を達成する事が出来たと実感しております。
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近い内に是非とも第3回アメリカ北東部スポーツビジネス研修プログラムを開催したいと考えております。これからも更なる研修内容の充実度アップのために、日々スポーツの現場に足を運び、アメリカスポーツビジネスの最前線を自らの目で確かめ続けようと思います。

最後になりましたが、今回のアメリカ北東部スポーツビジネス研修プログラム開催に際しては、数多くの関係者の皆様より、多大なお力添えを頂きました。この場をお借りまして、心からお礼を申し上げます。


アメリカ北東部スポーツビジネス研修プログラムに関するつぶやきはこちらから:ADM Twitter


ADMニューヨークスタッフ 三宮 伸也

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