2010年8月17日火曜日

言葉の重み

“お前ならいける。保証します。”あるメールの最後の文章。忘れもしない、アメリカに来てから1番嬉しかった言葉である。


2009年5月。春学期終了と同時に、Major League SoccerのKansas City Wizardsでのサマーインターンが始まった。貴重な体験、自分の長所・短所、トップレベルの世界、色々なものが見えた2ヶ月半。


実際、今年のワールドカップで活躍したUSA代表のGomezや、ホンジュラス代表のEspinoza、テレビで見る選手と過ごす日々は、お金には代えられないものがあった。インターン初日に、元アルゼンチン代表のクラウディオ・ロペスに会った時は、さすがに言葉がうまく出てこなかった。ウィニングイレブンで散々お世話になった伝説のレフトウィング、クラウディオ。あの時初めて、自分がとんでもない世界に足を踏み入れたことを自覚した。


2ヶ月半の間、辛抱強く僕を見守り、色々なことを教えてくれた僕の恩師であるKansas City WizardsのAssistant Athletic Trainer。“プロ”とはこういう人のことを言うのだと、身をもって感じさせられた人物。仕事への姿勢、責任感、絆の大切さと共に、この先に広がる可能性を見せてもらえた。


技術も知識も全くプロのレベルに達していなかった僕は、数えきれないミスを犯した。試合先へ持っていくテーピングの箱の個数を間違い試合当日ドタバタしたり、自分のできないことをプロの選手相手にやろうとしたり、インターン終了後に感謝の連絡を怠ったり。お世辞でもデキる人間ではなかった。しかし、僕を時にきつく叱ってくれ、時に褒めてもくれたWizardsの恩師。彼の知識、技術、眼力、閃き、全てに度肝を抜かれたが、何よりも奢ることなく、上を見続ける姿勢。それこそ、僕が一番尊敬している大切なものであった。


失敗だらけの2ヶ月半、自分の非力さに嘆き続けた2ヶ月半。


尊敬する恩師が、僕をどのように見ているのだろうと不安に思い続けていた1年間。インターン後に大学に戻り、彼の言葉を一語一句思い返し、少しずつ消化し彼の高みへ近づこうともがき続けた1年間。


数々の挑戦の末、只今インターン真っ只中のNFLのDetroit Lionsからサマーインターンとして雇われることになった。NFLのサマーインターンとは、数あるアメリカのプロスポーツ・キャンプの中で一番キツいと評判である。実際、僕も毎日3・4時間睡眠をここ3週間強いられている。


感謝とLeadership Conferenceでの経験、この夏の抱負を兼ねて、Detroit Lionsでのキャンプ、頑張ってきますと恩師に連絡をした。小さな大学出身の僕が、Wizardsでのインターンを経てまた違うプロでの経験が積めることに、僕と同様に喜んでくれた。


そして、メールの最後に“お前ならいける。保証します。”と。


嬉しかった。本当に嬉しかったのを覚えている。
僕にとっては深い、深い意味がこもっている、そんな言葉だった。



人に褒められる為に身を粉にしているわけではない。
人に羨まれる為に上を見ているわけではない。


全ては夢のため。


夢は見ているだけでは叶わない、叶える為に何ができるか。
夢を見ているだけの僕に、大きなステップを与えてくれた、そんな去年の夏だった。


これだから人生はおもしろい。



川田圭介
Henderson State University

0 件のコメント:

コメントを投稿