2010年7月7日水曜日

選手マネジメント業務の1コマ~海外銀行、及び証券口座申告編 Part1

Athletes Dream Management, Inc.ニューヨーク・スタッフの三宮 伸也です。


先週水曜日の6月30日は、米国における2009年度の個人確定申告に関する「海外銀行、及び証券口座申告」の期限日でした(英語では、「TD F 90-22.1 Report of Foreign Bank And Financial Accounts」と呼ばれています)。2010年4月21日付けのエントリー「メジャーリーガーの確定申告」で御紹介させて頂いたように、ADMでは、所属クライアントの米国での個人確定申告もアシストさせて頂いております。今回は、この「海外銀行、及び証券口座申告」とは何であるのか、ということを簡単に御説明させて頂きたいと思います。


「海外銀行、及び証券口座申告」とは、その名の通り、個人が米国外に持つ銀行、及び証券口座を米国内国歳入庁(IRS:Internal Revenue Service。日本の国税庁に当たります)へと申告することいいます。なぜ、米国における個人確定申告に、この「海外銀行、及び証券口座申告」が必要なのでしょうか?それは、簡単に言いますと、ある個人が米国内で上げた収入を、IRSの監視の届き難い海外へと送金することにより、実際よりも少ない収入を上げたと見せかけることを防ぐためです。収入が少なくなる(ように見せかける)ということは、それだけIRSへと入る税収が減ることを意味しますので、IRSとしては、是が非でもそのような事態を防がなくてはならないのです。そのためにIRSは、個人確定申告として、対象となる1年間に一瞬でも銀行、及び証券口座内の残高が$10,000(約89万円:1ドル=89円で換算)を越えた全ての海外口座情報の開示を求めているのです。これにより、前年と比較して、米国外における銀行、及び証券口座内の預金額が急激に増えていたり、新たな大口の口座が開設されていたりといった、脱税の可能性(勿論、ほとんどの場合は、違いますが)をIRSはキャッチ出来る仕組みとなっているのです。


2009年度は、スイスのUBSの匿名口座が脱税目的に使用され、刑事処罰を受けた納税者がおり(詳細は、2010年4月号のFACTA内の記事「プライベートバンク口座ご用心、国税が包囲網」を御参照下さい)、これまで以上に海外における銀行口座情報が重要視される傾向となりました。申告内容に漏れ、あるいは虚偽記載があった場合には、最大$500,000(約4450万円:1ドル=89円で換算)の罰金、5年以内の懲役という非常に厳しいペナルティーが課せられてしまう可能性があるため、所属クライアントを守る立場にあるADMとしては、細心の注意を払って、申告のための必要情報を入手しています。特に、メジャーリーガーのような収入の多い有名人は、IRSの調査対象となる可能性が高いため、より一層の注意が必要となるのです(一例としては、2007年11月16日付のESPN内の記事「State officials say he’s a New York resident; Jeter claims Florida」などをご覧下さい)。


毎年、「海外銀行、及び証券口座申告」の期限日である6月30日の数ヶ月前から、ADMスタッフは普段連絡を密に取り合っている米国のCPA様だけではなく、所属クライアントの日本国内の公認会計士様や御家族の方の協力を仰ぎ、フォーム「TD F 90-22.1 Report of Foreign Bank And Financial Accounts」を用いた申告準備を行っています(勿論、時には、直接、日本の銀行へと国際電話を入れ、必要情報を集めることもあります)。このように、「海外銀行、及び証券口座申告」のためには、日米をまたいだ多くの関係者の方の御協力を頂くことが必要不可欠なのです。そのようにして細心の注意を払って収集された情報を基に、普段から翻意にさせて頂いている米国内のCPA様より、フォーム「TD F 90-22.1 Report of Foreign Bank And Financial Accounts」を準備して頂き、所属クライアントから署名をもらい、Certified Mail、及びReturn Receiptを用いて、IRS(より具体的には、ミシガン州デトロイトにある「U.S. Department of the Treasury(米財務省)」)へと申請しています。

【海外銀行、及び証券口座申告のために使用されるフォーム「TD F 90-22.1 Report of Foreign Bank And Financial Accounts」】


次週のPart2では、「海外銀行、及び証券口座申請」申告のためには、具体的にどのような情報が必要なのかを御紹介させて頂きたいと思います。

(Part2に続く)

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