2012年5月30日水曜日

スポーツから見るアメリカと日本の違い

Wayne State Collegeの波多野陽介です。

バレーボールのNebraska Eliteというクラブチームで数週間前からボランティアをさせてもらっているのですが、今回のブログでは、僕の目から見えるアメリカと日本の違いを少し紹介させていただきます。
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まずは、大学の奨学金について少し説明したいと思います。アメリカの大学に進学する生徒の多くは奨学金を貰っています。この奨学金というのは、日本でいう学生ローンとは異なり返済不要の奨学金です。今回のブログではスポーツスカラーシップの現状を数字を含めて少し詳しくお話させていただきます。NCAA(全米大学体育協会)に登録されている大学の数が約1300校あり、その内の約10%が1部リーグに登録されています。1部、2部のみは奨学金の支給でが許されていて、年間20億ドル(1600億円相当)の奨学金が大学でスポーツをする学生に支給されています。しかし、全額支給の奨学金はスポーツによって支給できる選手の数が細かく定められている為、スポーツ奨学金は選手をスカウトする上で重要な要素でもあります。例えば、1部に所属する大学のアメリカンフットボールでは85選手への全額支給、男子バスケットボールでは13選手、女子バレーは12人等など… 1部と2部では全額支給の数が違ってきますが、NCAAに登録されているだけで約125千人の生徒が全額支給を受けて大学でスポーツをプレーしているのです。

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(写真 : 僕が指導を手伝っている17歳のチームとコーチ陣)

僕がボランティアをしているNebraska Eliteというクラブチームはネブラスカ州にあるオマハという都市にあります。敷地には体育館が3つあり、バスケットコート4面、バレーボールコート6面、そしてトレーニング施設が完備させているクラブチームです。バレーボールやバスケットボールだけでなく、トレーニングジムの個人利用も可能な施設です。選手の数ですが、バレーボールだけで200人の選手の指導を行っています。僕が初めて練習に行った日、コーチ陣との話の中で少し驚いた事がありました。僕が練習を手伝っている17歳のチームのほぼ全員が大学からの奨学金を貰う約束になっているとのことです。決まっている大学の中には名門校(オハイオ州立大等)も含まれていて、ほとんどの選手が全額支給での進学が決まっているのです。クラブチームには、15歳・16歳の時点で大学の進学+全額支給の奨学金が約束されている選手もいて、ここがアメリカと日本の大きな違いだと思います。

日本の高校生は、高校での部活動としてスポーツをする生徒がほとんどです。ここにも日本とアメリカの大きな違いがあります。アメリカでは基本的にスポーツによってシーズンが異なります。例えば、アメリカンフットボール、サッカー、バレーボールは秋学期に、バスケットボール、野球やソフトボール、陸上等は春学期がシーズンです。日本のように1つのスポーツだけを年間を通してプレーするのではなく、高校の大きさや生徒数等によっては1人の生徒が何種目かのスポーツをプレーしている事も少なくありません。これには理由(Title IX : タイトル ナイン)があるのですが、Title IXなどについては別の機会に紹介させて頂きます。 数種目をプレーする選手等がいる一方で、中には有名なクラブチームに所属し高校ではプレーしない生徒もいます。Nebraska Eliteのようなクラブチームの中には、他の州へ遠征し大会に出場するのがメインのチームもあります。その場合は、高校の勉強をサポートする為のチューターが遠征に帯同し、勉強面でのサポートをする事もあるのです。Nebraska Eliteでは、1人当たり年間約15万円のクラブ費用、そして保護者は遠征費等の負担もあるため、ざっと年間50万円近くの費用がかかります。コーチ陣もそれを理解した上での指導を行い、結果的に奨学金を支給されるレベルまで選手を育てるのがクラブチームの役割でもあるのです。 

僕がバレーボールのクラブチームでボランティアをさせてもらうのは今回が初めてではないのですが、毎回関心させられる事があります。それは形に捉われない指導方法です。クラブチームには11歳から18歳までの選手が所属しており、歳に合ったチームを編成し今年は21チームがこの施設で練習しています。選手達は練習前や練習後に筋力トレーニングをするのですが、そこにはやはりトレーナーがいて、細かく決められたメニューに沿ってトレーニングをしています。僕の卒業した広島城北高校にもトレーナーが来ていましたが、外部のクリニック等からの派遣でした。(アメリカには施設・高校等にもトレーナーが義務付けられています。)アメリカのクラブチームでは当たり前ですが、このように広い年齢層の選手を同時に練習させる環境は日本では少ないと思います。(Jリーグの下部組織は例外です)普段の練習から年齢層を混ぜての合同練習等をする事によって、選手のレベルを一気に引き上げる事に成功しているのです。多くの一流選手が言う『習慣としてビデオでプロの試合を見ていた』という事を耳にする事がありますが、自分よりも上手な選手と練習する事で、見て真似をすることでレベルアップに繋なげるというのがクラブチームの最大の魅力です。

他にも、コーチ陣の指導は自分が身振り手振りで説明するのではなく、言葉だけでの指導が多い気がします。練習中等に聞こえる声の中に『Play Smart』というフレーズがあります。コーチは選手自身に考えさせ、選手個人のプレースタイルを尊重しているのだと思います。細かい動きを指導するよりも、選手が思うようにプレーしてみれば良いという考え方が近いかと思います。僕が練習を手伝っている17歳のチームですが、個人の能力が凄く高いです。もちろん身体的なアドバンテージはありますが、技術もしっかりしている事に関心させられます。コーチが特別な技術指導をしないのに、チームでの練習でここまで個人の技術もしっかりしている。これがアメリカのエリート育成システムなのだと関心させられました。

他にも色々とアメリカと日本で異なる事はあるのですが、ブログが長くなってしまいますので、またの機会に紹介させて頂きたいと思います。


1 件のコメント:

  1. 私は、来年のAthletic Training Program(大学院)を目指し、Omaha在住の南波といいます。"Nebraska Elite" の存在は知りませんでした。最近、ジュニアやユースの選手育成に興味があり、今回の波多野さんのNCAAスカラーシップからD1アスリートを目指す選手をサポートするクラブチームの話、これらはUSAのスポーツ競技力の高さを支える一端なんでしょうね。しかもOmahaの話だったので大変興味深かったです。ありがとうございました!
    Eliteでの研修、頑張ってください!

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