2010年9月14日火曜日

苦さの後味

とある2月下旬の午後、
携帯が鳴った。

忘れもしない、大学アメフトチームのコンディショニング・エクササイズに付いていた時。

電話の主は、NFL Detroit LionsのAssistant Athletic Trainerだった。
今となっては恩師と呼ぶその人との電話。人生で一番怖かった時間かもしれない。






彼は電話での自己紹介もほどほどに、“それでは、電話面接を始めようかKeisuke。”と。

初めてNFLの人間、つまりBest of the Bestのトレーナーからの電話。嬉しさは、まさに天を突きぬけるかの如く。そして一番初めの質問、“NFL32チーム中、何チームにアプライしましたか?”

そして、迷いなく僕の口から出た数字、“4”。

まさか、電話面接で、初めて話す人の口からこの言葉が出てくるとは思いもしなかった。

“Who the hell you think you are, huh?”

訳すと、
“自分何様や思とんねん、あ?”

こんな感じだろう。

これが、僕のNFLの幕開けであった。
何百人と応募するNFLインターン。大抵の人は、是が非でもインターンを取るが為、全32チームに応募する。言わば、暗黙の了解。知らずにとは言え、僕の口から出た数字、4。常識を超えていた、悪い意味で。

電話面接はその時を境に、自分の失態を弁護しろ。という方向へ。
4チームしか応募していない。それでも誰よりもNFLで働きたい、その理由、自分の行動に対する責任が取れたら考え直す。

次の瞬間から、答えようのない、むしろこれといった理由のない自分の失態を隅から隅まで質問攻めに。話は派生し、履歴書、志望動機書、推薦状、一文一文くまなく掘り起こされる羽目に。

英語での面接、できる限りの敬語、気持ちのままに口を動かす。
しかし、全てにおいて相手が上。上過ぎて、途中本当に電話を切ってやろうかとも思った。

僕の全てを見抜かれ、弱み強み、本当のcolorを見透かされ、
半泣きになりながらも、電話面接は終盤を迎えた。

最後に彼は“Thanks Keisuke”と言い残して受話器を耳から下ろした。

電話面接。所要時間3時間30分。
あれほど辛く、怖かった面接はこれから先あるのだろうか。
本当に精根尽き、結果は全く気にしていなかった。

2日経ち、同じ番号からの電話。
取るのがとてつもなく怖かったのを今でも覚えている。

彼の声は面接時と打って変わって、明るく揚々としていた。
“Keisukeを取ることにしたよ。君との会話は本当に有意義で、君の相手を大切にする思いがしっかり伝わってきた。”と。

もちろん、僕の他に選ばれたインターン生は、大きな有名大学出身で、全チームに応募し、ほんの40分程度の電話面接で通っていたことは、後々知ったわけだが。

しかし、今となっては彼に感謝の意しか出てこない。
初めての電話で、あそこまで親身に僕を叱ってくれ、そして追いつめ本当の自分に気づかせてくれた。

これが僕のNFL。ここからが全ての始まり。



川田圭介
Henderson State University

0 件のコメント:

コメントを投稿