2003~2009年シーズンまで松井秀喜選手が活躍していた事から、日本でも非常に馴染みの深いNew York Yankeesですが、先ずは球団について簡単にご紹介させて頂きます。
Yankeesは、MLBに限らず、NFL、NBA、NHLを含めた北米メジャープロスポーツリーグ所属の全チームの中で、最多優勝記録27回を誇るMLB No.1の名門球団として広く知られています。2009年シーズンのワールドシリーズの舞台で、松井選手がMVPに輝く活躍を見せ、Yankeesを見事に27回目のワールドチャンピオンに導いたのは、未だに記憶に新しい所でしょう。
また、10回目のレポートでご紹介したPhiladelphia Phillies同様、フィールド上だけの成功に留まらず、2011年シーズンに主催したホームゲーム全81試合で、MLB第2位の観客総数365万3,680人を動員するなど、ビジネス面での成功も収めています。フォーブス誌が毎年発表する「The World’s Most Valuable Sports Teams」最新ランキングにおいて、イングランド・プレミアリーグManchester United、NFLチームDallas Cowboysに次いで、Yankeesは世界第3位(総資産価値17億ドル:約1360億円)にランキングされています。
研修では、15億ドル(約1,200億円)もの巨額の費用を掛けて建設され、2009年シーズンにオープンしたばかりの新Yankee Stadium(収容人数5万297人)内にある球団オフィスを訪問致しました。
今回、研修参加者の皆様のために、MLB球団の編成業務に関する特別講義を行って頂いたのは、ベースボール・オペレーション部署アシスタントのSteve Martone様です。Martone様は、普段は選手の個人成績や試合映像、スカウトから上がって来る日々のレポートを管理・統括し、トレードやFAによるチーム補強、Yankees組織内の選手昇格・降格など、編成全般に関する助言をGMであるBrian Cashman氏に行っています。
Martone様からは、
- 現在に至るまでのキャリア過程、いかにしてベースボール業界へと足を踏み入れたのか、世界中のスポーツビジネス業界の中でも一際優秀な人材が集まるため、就職するのが困難を極める事で有名なYankeesで、職を得る事の出来た秘訣
- 詳細な仕事内容、典型的な1日及び1年の流れ、ベースボール業界で働く事に対するやりがいと苦労
- 自分自身の経験、及び内部にいる立場から、ベースボール業界への就業を目指す参加者へのアドバイス
- Yankeesが運営する大学生のためのインターンシッププログラムの解説
- MLBの中で最大の予算規模を誇り、常に最前線を走るYankeesの球団編成システム
に関して、約1時間にわたってお話頂きました。
参加者一同が特に熱心に耳を傾けたのは、ベースボール業界へ就職するために必要不可欠な「誰にも負けない特技」や「ユニークな経歴」を持つことの重要性に関するお話でした。Yankeesが運営する大学生のためのインターンシッププログラムには、毎年名門球団への就職を夢見る学生から、1万通を優に超える履歴書が届くそうです。Martone様もインターン採用に深く関わっているそうですが、いかに他の候補者と差別化出来る特技や経験を保持しているのかをポイントにして、履歴書をチェックするそうです。
差別化のポイントは候補者によって様々なのですが、Martone様が例として挙げていたのは、
- コンピュータプログラミングの技術に優れている
- 著名なセイバーメトリックス系ウェブサイトにコラムを寄稿している、あるいは自分自身がウェブサイトを運営しており、トラフィックを集めている
- 大学時代に名門野球部のマネージャーを務めていた
などの特技や経験があると、1万通の履歴書から約300通前後に絞られる書類選考を通過する可能性がぐっと高まるとの事でした。
書類選考を経て300人前後に絞られた後は、「電話面接」→「対面面接」を経て、最終的にインターンとして採用される30名前後へと絞っていくそうです。その際に重要なのは、「Passion」、つまり「情熱」が感じられるかどうかである、とMartone様は仰っていました。外から見ると一見華やかそうに見えるベースボール業界ですが、試合の開催日には夜11時過ぎまで球場に残る事も多く、週末出勤も当たり前という非常に厳しい労働環境です。憧れだけで続けられる職業ではないため、自ら進んでエクストラワークに取り組み、常に情熱を注いで業務に取り組む事の出来る候補者を面接時に見極めて採用するように心掛けているそうです。
将来アメリカのメジャースポーツチームでの活躍を目指している参加者の皆様にとっては、他のライバル達と差別化を図るために今後どのように努力を重ねて行くべきなのかを考え、恒常的な学習意欲を湧き起こす、非常に良い機会になったようでした。
ちなみに、Martone様より特別講義、及びその後に続く質疑応答を行って頂いた、関係者以外立ち入り禁止の球団オフィス内ミーティングルームの壁中には、MLB全30球団のメジャー枠(40人枠)登録選手のネームプレートが所狭しと張られておりました。普段は、Brian Cashman GMを始めとする球団上層部の皆様が集まり、他球団とのトレードの可能性や、自軍選手のメジャー昇格・マイナー降格について、日夜を問わず激論を交わしている場所であると伺い、参加者一同は興奮を抑え切れない様子でした!
【Alex Rodriguez選手やMark Teixeira選手が試合前に入念なウォームアップを行うトレーニングルームです】
【今シーズン、黒田博樹投手が躍動するであろう新Yankee Stadiumのフィールド上にも一足お先に降り立つ事が出来ました!ちなみに、私達が訪問する1週間前の2011年12月30日には、この同じフィールド上で、カレッジフットボールのNew Era Pinstripe Bowlアイオワ州立大学対ラトガース大学の試合が開催されました。オフシーズンのベースボールスタジアム活用法の一例ですね!】
【Babe Ruth氏やLou Gehrig氏、Yogi Berra氏といったヤンキースの栄光の歴史を語る上で決して外すことの出来ない伝説の選手達の記念碑や永久欠番の盾が飾られているモニュメントパークです!】
参加者一同は、普段アクセスする事の出来ないロッカールーム内やフィールド上、モニュメントパーク、New York Yankees Museumを視察した事で、改めてMLB No.1の名門球団であるYankeesの伝統と歴史を体感する事が出来ました。
3月19~25日に実施する「アメリカ北東部スポーツビジネス研修プログラム」では、同じニューヨークを本拠地するNew York Metsを訪問しまして、9億ドル(約720億円)を掛けて建設され、2009年シーズンにオープンしたばかりのCiti Fieldを視察し、球団スタッフの方からの特別講義を受講する予定です。今回ご紹介したYankeesとはまた違ったMetsの編成システムや、今は亡きBrooklyn Dodgersの本拠地Ebbets Fieldをモチーフにしてデザインされたレトロ型ボールパークCiti Fieldの施設運営法をを学ぶ事の出来る内容となっております。将来、MLB球団への就職を目指す日米のスポーツ経営学専攻の学生様や、日本のプロ&実業団チームのスタッフの方からのご参加を是非お待ちしております!
Athletes Dream Management, Inc.ニューヨーク 三宮 伸也
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