2011年8月5日金曜日

プール際の攻防

泳ぎ方を知らない人間をプールに突き落とした場合どうなるか。

凄く酷な例えではあるが、新たなことに挑戦するにあたって
非常にユニークであり、尚且つ劇的な向上が見られる考え方の1つ。



巷でよく言われる
Be Comfortable with Being Uncomfortableという言葉。
言い換えると“居心地の悪い状況下に心地よくあれ。”

新しい仕事、新たな役割や責任、未開の土地に足を踏み入れた時、
期待感ややる気の陰に潜む、見えないストレスや張りつめた緊張感。
そういった状況下で人は成長が著しく、呑み込みも早くなり
時に劇的な変化をも見られることもある。



Temple Universityでの大学院生活がスタートし、
7月下旬から院生のオリエンテーションやミーティングの中で
色々な教授・学生に会い、話す機会がある。


僕が教鞭を持つことになる大学12年生を対象にした解剖学のクラス。
その学科を統括する教授が僕の履歴書を手にひと言目に放った言葉

I can see you gain great swimming skills.”と。
(泳ぎがうまいのが分かるよ)


反応に困った表情をしている僕を見て、
“泳ぎ方を知らない人をプールに突き落としたらどうなる?”
一呼吸置いた後、

“ほぼ誰一人溺れ死なない。”


人は何とかして、死に物狂いでプールサイドに辿りつく。
例え泳ぎ方が不格好であっても。
ただ、そういった状況に身を置く人間はあまり多くはないとのことだった。



言われてみると凄く身近にいい例えがいることにも気付く。
ヘンダーソン州立大で一番仲の良かった一つ下の学年の2人。





彼らとは凄くいい影響を与え合い、よきライバルでもあった。


彼らは強制もされていないのに一人で
東海岸地区のトレーナー総会に出席し、孤軍奮闘してきたり、
夏休みを利用してタイまで飛び、現地でタイの古式療法を学んできたりと。

そして溺れ死ぬことなくプールサイドまで辿りついた彼らも今、
1人は僕が去年経験したNFL Detroit Lionsで、
もう1人はMLB Texas Rangersでのインターン真っ只中である。



昨今変わらず大学のネームバリューが重視される中、
決して大きくなく、有名でもないヘンダーソン州立大学から
同時期にプロでの経験が詰めている彼らを見ていると教授の例えがよく分かる気がする。



臨床に重点を置いて戦ってきた自分も
今や完全に研究・教育の方向にシフトした大学院生活。
事実、NFLMLBMLSESPNでの経験から得た武器が
ほとんど通用しないと言っていい分野での戦い。



そして教授が続けて言った言葉。
But I’m going to have to drop you into the ocean this time
(でも今回君には海に落ちて這い上がってきてもらうよ)


満足するには数十年早いこの人生。
人生、それは邂逅。人との出会いが新たな門出。



川田圭介
Temple University

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