5年も前になるだろうか、
アメリカに来て一番嬉しかった出来事。
友達が1人できたこと。
日本での高校時代、友達作りなど造作もないことだった。
現に友達を作ろうと努力するものでもないことだと。
アメリカの大地に降り立ったがいいものの、
言葉の壁、文化の壁、価値観の壁。挙げればキリがないほどの困難。
本当に難しかった。凄く努力した。
たった1人、友達を作るのに。
友達ができた時の嬉しさは言葉にはできない感動と安堵感。
忘れてはいけないあの感覚と、今の基盤になっているその努力。
1月3日から始まったフロリダ生活にも幕を閉じる時が来た。
ESPN Wide World of Sportsというアメリカ切ってのスポーツ施設ゆえに
色々なスポーツ、人種、そして個性と出会うことができた。
共に働き通した仲間達。
今となっては言葉の壁も文化の壁も、ほとんどと言っていいほど感じなくなったからなのか
アメリカ人の中に日本人ポツりという環境でもごく自然に、
5年間で何が変わったのか。
環境に順応したし、英語力ももちろん上がったが
また違うところにアメリカに馴染むコツがあるように思う。
一番大切な要素は、どれだけ個性を出せるか。
ESPN WWSでの仕事が終わりに近づいた頃、
“将来雇用スポットに空きが出た時の為に”
という内容でこの場所を統括する、雇用主でもある
ケリーという人との個人面接が行われた。
実際、終了後に上位1から3番手まで名前が挙げられるという
緊張感たっぷりな面接だったのは確かである。
質問は凄く的を得ているものから、興味深いもの、そして心理を探るもの。
素晴らしく構成立てられた質問の数々。
例えば、成功の定義を自分の経験を元に。自分が雇用主なら自分以外の10人の中で誰を雇うか。コーチと選手の間に立ってのシナリオ。
最後の質問を前にケリーはこう前置きをした。
“実際社会に出てこういった質問をされることは稀です。でも、もしこのような質問をされた場合、よくよく考えて答えなさい。”と。
そして、こう質問を続けた。
“あくまで仮定の話ですが、明日地球が滅亡するとします。一つだけ願いが叶えられるとしたら何を望みますか。”
と。
面接も無事終了し、ケリーが11人全員を集めて面接のコツや
履歴書の書き方について説明し、最後に上位3人の名前を言い、その理由を話した。
ケリーが念を押して僕たちに言っていたこと。個性豊かな質疑応答。
ありがたくも僕の名前が1番手に挙がり、
駄目押しとなった理由は最後の返答にあったと言った。
ケリーは皆に向かって、
“Keiは最後の質問を聞き、少し笑ってこう言いました。”
“もし明日地球が滅亡するなら、エマ・ワトソンとランチがしたいです。”
と。
(注:ハリポタのハーマイオニー役)
10人中7人以上は家族や恋人との時間をベースに答えを構成するであろうこの質問。
しかし、面接官がこの質問で求めているのは
家族愛や恋人を大切にする心の有無ではなく、どれだけ個性のある返答ができるか否かだと思う。
5年目に突入するアメリカ留学生活。
友への感謝、そしてここで出会ったありがたみを忘れず
5月10日から実家の神戸で1ヶ月と少しの間羽を伸ばし
Temple Universityのあるフィラデルフィアへと。
生き急ぐ必要はない。ゆっくりじっくり。
Take Your Time, Don’t live too fast.
川田圭介
Temple University